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変わる世界で、その手は、何をつかむのか

SOLUTION03

インドを起点として構想する、
世界の鉄鋼の需給最適化

2000年以降、日本の鉄鋼需要が緩やかに減少する一方、グローバル需要は激増。それに伴い、各国の鉄鋼メーカーが現地生産する動きを加速している。全世界を見渡した時、鉄鋼の需給をいかに最適化していくか。それは世界の鉄鋼業における共通の課題だ。そんななかSCGMはインド現地の特殊鋼メーカーとともに事業会社「ムカンド・スミ」を立ち上げ、2017年には特殊鋼圧延事業を合弁化。業界初の川上への事業多角化を果たした。
SCGMはインドでの事業投資を通じて、世界の鉄鋼業の課題にどう応えていこうとしているのか。ムカンド・スミの事業に、それぞれ日本とインド現地で携わる3名の社員の話のもと、その取り組みを追った。

PROFILE基幹職

線材特殊鋼鋳鍛事業部
(Mukand Sumi Special Steel Ltdへ出向中)

星 克成

2017年に入社以来、特殊鋼のトレード(国内・貿易)に従事。そのなかで、インド現地で特殊鋼の拡販活動にチャレンジしたいと思うようになる。その希望が叶い、2021年12月よりインド駐在。現在は同国の特殊鋼メーカーであるムカンド・スミにて、日系の自動車、二輪、部品メーカーの顧客をメインに営業活動を行っている。

PROFILE基幹職

線材特殊鋼鋳鍛事業部 線材特殊鋼チーム

成田 真

新卒入社した自動車メーカーで海外営業を10年経験後、2004年にSCGMにキャリア入社。2010年からインド現地の有力特殊鋼メーカーへの出資案件に取り組み、2013年には案件担当としてインドへ赴任。現地特殊鋼メーカーへの投資という、業界初の川上への投資を成功に導く。帰任後はその経験をもとに、事業開発・事業会社の主管業務に携わる。

PROFILE基幹職

線材特殊鋼鋳鍛事業部 事業開発第一チーム

杉本 明日香

世界中で展開するスケールの大きな鉄鋼ビジネスに魅力を感じ、2016年に入社。入社後、現部署の線材特殊鋼チームに配属され、中国材の輸入、ベトナム・タイ向けの輸出取引を担当した。その後、同部署の事業開発チームに異動し、米国・中国・インドネシアなどの非連結出資先の主管業務を担当し、2022年よりムカンド事業の主管業務を担当している。

※掲載内容は、インタビュー当時のものです。

ISSUE 01

インドの人口ピラミッド

これから成長する新興国の旺盛な鉄鋼需要に、的確に応えていくために。

SCGMがムカンド・スミへの出資に至った背景には、在インドの日系自動車メーカーの顧客が直面していた課題があった。「インド政府のMake in India政策を受け、これまで輸入材に依存していた高品質・高付加価値な鋼材を、現地調達に切り替える必要がある。しかし、インドの鋼材といえば一般的に“安価・低品質”というなかで、それが実現できるのか」と。そこでSCGMは、高い技術力を有する現地の特殊鋼メーカー・ムカンドをパートナーに選び、そこに住友商事グループの営業力、ノウハウを集約し、高品質・高付加価値な鋼材を製造・供給できる体制を構築。その結果、日系自動車メーカーの顧客の課題を解決に導いた。
そんななか、現地に入り込み、“自ら製造し供給する”インサイダーとなったSCGMが実感したのが、インドをはじめ、多くの新興国の旺盛な鉄鋼需要だ。そうした需要にいかに応えていくか。それこそがSCGMの大きな課題だと星は語る。「活気あふれるインドにいると、今後あらゆる産業に必要な鉄鋼の需要は増えると肌身で感じます。同時に、今新しいことをはじめなければ、世界の鉄鋼業の変貌に置いていかれるという危機感も覚えます。現在のメイン顧客となっている自動車メーカー以外の産業のお客さまや、インド以外の新興国にもアプローチし、高品質・高付加価値な鋼材を提供していく。それが我々の進むべき道だと思います」。

インドの人口ピラミッド

ISSUE 02

品質と価格のバランスをいかに取り、
顧客ニーズに合った鋼材を提供していくか。

ムカンド・スミとして、より高品質・高付加価値な鋼材を供給できるようにしたい。そこでSCGMは2021年に世界最新鋭の新圧延工場を立ち上げ、同年8月から全品種の商業生産を開始。しかし当初、操業が安定するまでには時間を要した。ここに川上参入に伴う難しさがある、と成田は言う。「当社は鋼材の販売と比べると、鋼材製造や原料調達などの鉄鋼業経営に関する知見がどうしても乏しく、工場の構造理解や問題発生時の原因究明に苦労するのは事実。しかし、インサイダーとして新たな商流を創造していくためには、これは避けられないチャレンジです。幸いパートナーのムカンドはインド国内で特殊鋼品質No.1の評価を得ており、彼らの知見を学びつつ改善を重ね続けています」。
努力の成果は徐々に実を結び、現在は生産量、品質ともに向上し、顧客の高度な要求にも対応できる状況に。今、新たに向き合っている課題は、インド国内の競合環境が激化するなかで、ムカンド・スミのプレゼンスを維持しつつ、いかに成長拡大していくかだ。杉本は語る。「価格競争に飲み込まれることなく、製造コストの削減やさらなる技術力向上への努力を重ねるなかで、価格と品質のバランスを取っていくことが重要です。また同時に、インドが掲げる2070年カーボンニュートラルを見据えて、どの工法で鉄鋼業を継続・拡大していくかといった戦略も考えていかなければならないと思います」。

これらの
課題を克服した先に
SCGMが描く
未来図とは。

SOLUTION

インドから世界中へ。
鉄鋼業の新たな潮流を創造していく。

今後、インドが世界のものづくり、物流の中心になっていく未来を見据え、SCGMはインドを起点とする鉄鋼ビジネスの展開を模索している。「インドは地理的要因もあり、中東やアフリカなどへ製品を輸出するお客さまが多いのですが、将来的には生産拠点を中東やアフリカへ移すお客さまも出てくると思っています。そうなれば、今まで我々がリーチしにくかった遠隔地のお客さまに特殊鋼を供給するという可能性が広がっていきます」と星は言う。
また、ムカンド・スミの事業の成長拡大は、インドの鋼材といえば“安価・低品質”という一般的な評価を変えていく可能性もある。成田は言う。「ムカンドの技術力と、我々が蓄積してきたノウハウを融合させることにより、ムカンド・スミは高品質な特殊鋼をお客さまに供給することに成功しています。そうして、これまで限定的だった高品質な特殊鋼マーケットに新潮流をつくっていくことで、世界の鉄鋼の需給最適化にも貢献することができるはずです」。
杉本も地球規模の視点で語る。「環境負荷の高い鉄鋼業においては脱炭素の視点が欠かせません。私たちが率先してインドでもカーボンニュートラル実現に取り組んでいくことで、少しでも鉄鋼業の未来に貢献していければと思っています」。
地球規模の視点で鉄鋼業全体の課題に向き合っていく。そのなかでSCGMは鉄鋼業の新潮流を拓いていこうとしている。